掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。
18) 企業リスクマネジメント
第8話 〜戦略的に認証機関を活用せよ〜
製造業者の企業リスクで頭に浮かぶのは、やはり製造物の安全性、信頼性が確保できていなかった時の損害であろう。ものづくりの根源となる設計開発チームは、やわらか頭で夢を忘れず、奇想天外な発想で、新しいパフォーマンスの創造、機能の付加、寸法や重量をより小さくすることに注力する。こうした設計製品が時として安全性に影響を及ぼす可能性があり、これを第三者に検証してもらうために公的基準に基づく認証を取得するのが通常のプラクティスである。そして評価の末に、ミリ単位の差で不適合になることもよくある。製品をコンパクトにしたが、絶縁距離が足らないといった具合だ。開発の夢を摘んでいるようで、なんとも申し訳ない気分になることもあるが、こればかりは仕方がない。製品の安全性を、第三者認証を取得することで立証するとしたら、規格試験の結果が全てであるからだ。但し、本来の企業の目的は、製品を市場へ販売すること、そして利益を生むことであり、規格試験に合格すること、認証を取得することがゴールではない。
なぜその製品がその認証を取らなければならないのか、明白な方針をもっているか。企業理念の大枠は、“安全な製品を顧客に提供し、社会に貢献する”といった具合であり、経営幹部は認証そのものにこだわりを持っているわけではない。安全性の確保のみが経営幹部の関心事である。ということはつまり「認証」を取得するということは、「安全」というゴールに近づくためのひとつのプロセスに過ぎないのである。そうであるならば、認証取得をいかに効率よく行うかというプロセス改善が健全な経営に不可欠となる。
IECでは、IEC規格(国際電気標準規格)評価により適合証明書を発行しこれを相互に流通しあうという制度(IECEE−CB制度)が存在する。この証明書(CB証明書)を発行できるNCBという機関が世界に58機関ある。発行対象製品については、機関からCB証明を発行してもらい、その結果を他機関の認証取得に活用することができる。また、ENEC(ヨーロッパ標準電気認証)というスキームでは、CENELEC(欧州相互認証協定)加盟の23機関の代表機関が、EN(欧州)規格を共通規格としてEU/EFTA経済圏での流通を目的として1(ワン)マーク制度を設けている。その他、いろいろな国際、地域スキームがあり、認証機関も多種多様である。
認証機関の試験品質は、加盟機関相互の査察によりその適格性が確認され、認証行為を認められていることを省みると、理論的には同等である。従って、メーカーは販売国や、製品、予算などによって認証機関を自由に選ぶことが出来る。但し、製品分野によっては認証機関といえども、認証不可、あるいは得意不得意がある。年間の認証発行件数などで、おおよその得意不得意を推察することができる。発行件数がCBブリテンで確認できるので参考にされたい。
また、所要期間や費用も認証機関によって異なり、費用標準を1とすると、認証機関によって0.5〜2.5位の開きがある。先進国は規制緩和によりほとんどの機関が民営化している現状を考えると、認証ビジネスは過熱する一方だ。
わが社に最適な認証機関と、QCDを考慮した上で複数選択し、戦略的に活用することが認証実務者のボトムラインであり、あわせて効果的・効率的な認証取得を推進することが企業体質の強化と安全技術力向上に大きく貢献することに企業経営者は、真剣に目を向けて欲しいものである。
(05年10月26日掲載記事)
