掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。

グローバル時代の生き残り戦略

25) 企業リスクマネジメント 第15話~熟年離婚~

先日、興味深い番組を見た。最近、流行の熟年離婚に至るプロセスを分析したものだ。

この章では「企業リスクマネージメント」からいささか脱線するが、遅かれ早かれリタイアする予備軍へ、他人事ではない警告メッセージを送りたいと思う。

ある営業部長の彼は、営業一筋の猛烈リーダーとして、朝な夕なに部下を叱咤激励し第一線で戦っていたが、57歳を機に管理職として管理部に配置換えされた。これまで実務をバリバリとこなしていた彼にとって、管理職のデスクワークは苦痛以外の何ものでもなかった。

家庭においても精神の不安定さは隠しきれず、長年奉仕した現場から外れてしまって行き場のない気持ちがうつ病を誘発し、そんな落ちぶれた彼を見ていられなくなった妻はついに退職を勧めた。35年も働き尽くめだったのだからもう休んでいいだろうと納得し、家族で退職祝いをした。しかし、不幸はこれからだった。彼は朝から晩まで1日中パジャマを着たまま、横たわってソファから動かずテレビばかり見ている。

ただ唯一の関心事は今日の昼ご飯だという。無気力で出掛けることも億劫(おっくう)、妻は勇ましかった夫の変わり果てた姿に失望した。妻は仕事を持っており、このまま夫が介護を必要とするようになったら仕事が続けられない。しかし、見捨てることも出来ないと悩んだ。

もう一つの例。定年退職をした夫は、退職後家庭においても妻を部下のような口調で扱い続けた。全てが自己中心的な行動、食事中にあれが足りない、これが足りないと妻に注文を出し、ようやく妻が食べ始める頃、自分は食事が終わり次の注文を出す。家の中の埃チェックをしては妻に説教、関心が家、妻に集中するので日々小うるさい。やはり1日中ねずみ色の部屋着兼パジャマでソファの上に横たわり、テレビの前に居住している。昼食時間は非常にうるさい。
 
長年12時に昼休みの鐘が鳴ったせいか、12時、12時と昼食をせかす。やることがないので、妻のカルチャーセンターにまで着いてきて10分で終わらせるようにせかす。妻の生活を無視し何もかもが自分中心、妻は次第に嫌悪感を持つようになり、ついには定年退職後の夫を持つなんとかというストレス症候群にかかり、顔面神経痛等の病気に悩まされるようになった。

この2つの事例に共通して言えることが、環境の変化への対応能力の欠如、妻に対する負荷、思いやりの欠落、そして第2の人生を自ら築けない甘えであると考える。そして面白い事に、皆、ねずみ色の部屋着兼パジャマを着用し、お昼ご飯にうるさいらしい。ねずみ色だと何日着ても汚れが目立たないからだ。

昨今、熟年離婚コンサルタントという職業もあるらしく、離婚しても厚生年金の半分をしっかりもらえるようになった妻は、こういった面倒くさい夫に振り回されずに晩年を謳歌できるようになった。熟年離婚後、女性の平均寿命は離婚しない人と変わらないのに対し、男性は10年も平均寿命が縮まり、早死にするという統計が出ている。前述の後者の妻は、離婚を選択し、夫の呪縛から解放されることで、病気がすっかりよくなり第2の人生を謳歌している。

一方、前者の妻は夫改善計画を打ち出し、見事離婚の危機から脱出することができた。改善計画とは、夫に元気が出る赤い色の服を着せかっこいいと褒め殺す、テレビを見ている時等、何気なく手を触れる等のスキンシップをする、空のスケジュールをどんどん埋めていき外出のチャンスを作ってあげる・・・これにより無気力夫は改善され夫婦円満になったそうだ。

最後に予備軍の男性へ送りたい。いつまでもあると思うな親と妻、退職後妻と一緒にいる、そのための工夫と相手への思いやりが、惨めな熟年を過ごさない秘訣である。

「今まで家族のために働き続けたのだから好きなことをさせろ」という考え方が既に危ないのである。

(06年6月28日掲載記事)