掲載記事はナノテックシュピンドラー社長 シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。

グローバル時代の生き残り戦略

39) 企業リスクマネジメント 第29話〜やくざな商売〜

 今年6月に牛ひき肉偽装事件が発覚した。多量の賞味期限切れの豚などのくず肉、腐りかけの肉、内臓や血液のほか、日本では食用できない中国産のジャイアントラビットまで混入し、牛肉コロッケと偽っていた会社社長が不正競争防止法違反と詐欺罪で逮捕が秒読みになっている。また、驚くことに腐ったイチゴのケーキも使用されていたという。なぜ?何のために?と誰しも頭をひねりたくなる。理由は、つなぎのパン粉代わりだそうで、クリームが牛脂代わりになるからだ。食を愛する調理人には、到底考えられない発想であろう。この社長が行った行為は、徹底的な仕入れ費用のカットである。通常のコロッケの出荷量は肉の仕入れ量の2倍程度とされているが、この会社は肉仕入れに対し20倍以上の増量にして出荷している。つまり、如何に仕入れにカネをかけずに沢山の量を販売することに精を出してきたかということである。産廃業者にくず肉の廃棄料を支払っていなかったことを鑑みると、すべて捨てずに使用していたと思われ恐ろしくなる。

 一方で新たな事件発覚、誰しも関西出張の折りにお世話になった300年の歴史を持つ老舗の和菓子屋までも、製造日を改ざんして販売していた。製造したその日限りの販売が謳い文句で鮮度を売りにしていたのに、実際は作り置きをしていたのである。また社員の証言が本当ならばもっとひどい話が、売れ残りにパッケージの包装を換え、翌日の製造日付けスタンプを押し商品の山に並べていたという事実だ。牛乳を買う時、確かに賞味期限が早いほうが手前に並んでいるので、奥からより永い賞味期限の刻印があるものを選ぶときもあるが、この手口を使われるとすべてが“出来立て”であり騙されてもわからない。1日に製造できる量は限られているのだから、常に沢山出荷できるように作り置きをし、売れなかった場合も材料をリユースすることで、和菓子屋は売上高を伸ばしていた。「たった一銘柄、あんこ餅ひとつで560億円の経常利益を生む素晴らしい会社である」と、そう遠くない昔、人から聞いていただけにどんな経営展開をしているのか、興味を持ったところであった。

 上述した2社は、たまたま話題の企業であるが、その他にもブロイラーを地鶏と偽った企業があったり、政治家に便宜を図ってもらうために貢いだりと昨今不祥事が多すぎるような気がする。いや、水面下に隠れていたグレーな部分がはっきり黒と世に映し出されているといった方が正しい。上記2社には、共通したものがある。それはいかに支出を抑え、いかに収入を沢山得るかという利益追求の大原則を、何をやっても儲かればいいと社会を馬鹿にしていたところだ。あえて私は“やりすぎた、はきちがえていた”といった表現は使いたくない。なぜならば、当然悪いこととしりながらやっていた確信犯であり、そんなことも、知らない無知な経営者はいないからである。

 最近、経営とはやくざな仕事なのかと思うことがある。一代で城を築くためには、どんな手段であってもぼろ儲けしなければならない。そのために腐った肉も混入し、製造日偽造工作して消費者を騙したのである。どの経営者も、何かしら人には言えない経験があると思う。特にワンマンで成り上がりのオーナー経営者にその傾向は強いようだ経営が透明でない、社内の意見を吸い上げるシステムがないといった風土において起こりやすい。かといって、慈善事業ではないので、正義感だけでビジネスセンスがない会社は倒産してしまう。しかし、事業の看板であるミートをラビットに替えてはいけない、昨日のものも今日のものと偽ってはいけない。グレーが美味いという経営者もいるが、危ない橋を渡り続けることが企業目的ではなく、やっている事業を通じて、国家や社会に貢献し、関係者や社員を豊かにしたいといった経営者自身の正義感や倫理観にひとえに依存せざるを得ない。常に経営者は、損得やカネと倫理観、どちらが勝つか日々問われるやくざな仕事に身をおいていると言っても過言ではないが、魂まで売るな。城は、皆で基礎をこつこつと積んでいった結果、建つものである。