掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。
42) 企業リスクマネジメント 第32話〜インパーシャリティ(公平性)〜
昨今の企業における相次ぐ不祥事は、コンプライアンスの欠如のもとに起こっている。一般的企業においては法令遵守及び業務に関係する基準を遵守しなければならないのに対し、いわゆる、製品やシステムの認証機関については、上記のほか、ISO/IECガイド65やISO/IECガイド62といったスタンダードが、認証機関が従うべき基準となっていた。しかし、ISO9000やISO14000といったマネージメント品質システムの審査登録機関が従うべきISO/IECガイド62が、06年9月にISO/IEC17021という規格に書き換えられ、07年7月には、日本の基準であるJIS Q 17021として制定されたのである。この規格制定の背景には、「ガイド」という名の下の曖昧さを取り除き、完全にISO化したという点があげられる。「ガイド」というのはガイドライン、つまりは、“従ったほうがいいですよ”という意味合いなので、基準適合への強制力が極めて曖昧であったが、“ガイドがとれた”ことにより、“従わないと適合していません”といった明確な適合基準になった。ガイドライン程度で強制力がないと、適合性の判断がグレーになる。だから、今回の規格改訂ですっきりした感がある。
また、今回の規格の主な変更点は、4項以降の「Impartiality(インパーシャリティ)」の要求事項の規定が細分化、具体化された点だろう。インパーシャリティとは、辞書には、公平、無私、不偏、えこひいきのない、英英辞典にはfairness,justiceと書かれているが、完全無欠といった意味合いであると専門家に教えられたことがある。これまでのガイド62では、「私は公平です」という荒っぽい宣言でも通っていたのに対し、誰が見ても公平性、中立性が認められなければならないのである。また、認証機関運営を諮問する公平性委員会の設置も義務づけている。
例えば、Threats(脅威)という項目がある。これは個人または機関が、業務を遂行する者や関係する者に対し、主に経営上の興味の観点から、脅威をかける可能性があってはならないという意味である。立場は違うが、製造日を改ざんして販売したり、虚偽の申告や試験データの改ざん等がいい例であって、従業員は上司からそういった指示がくると、サラリーマンの立場においてなかなかつっぱねることが出来ない。たとえ、それが悪いことであるとわかっていても、脅威には勝てないのだ。こういった権力や立場を利用し、健全運営ができないかもしれない可能性があれば、それを排除しなければならない。
また、Conflict of Interest(利害の抵触)の可能性も問われている。認証機関は他との関係を持つことから生じるいかなる利害抵触の可能性の特定と、それが公平性に対する脅威になる場合は排除しなければならない。“違反していない”ではなく、“ありえない”環境を作り、周囲が認めなければならない。この度の規格改定で、関係する世界中の認証機関は己の組織やシステムを見直し、新しい規格に適合させねば、継続したマネージメント品質システム認証行為ができなくなる。内容は以前より厳しいものとなっているので、何らかの影響がそれぞれにあるのではと考えられる。また、市場における製品の安全性に直結するマネージメント品質システムを確認する立場において、妥当な要求事項であると思う。
もちろん、認証機関といえども経営の安定を図るために利益はあげなければならないので、公平、中立の顔と健全経営をする顔が一枚刷りでなければならない。
この規格の最大のハイライトであるImpartiality(公平性)、Openness(透明性)、Cofidentiality(機密保持)は、どの企業のコンプライアンス確保にも通じるところがある。コンプライアンス経営のために、こういった要求基準に経営者自らが前向きに取り組むことによって、少しは不祥事が減るのではないかと願うところである。
