掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。
6) 潜在的危険源(ハザード)の特定
【リスクアセスメント実践編:ステップ3】
規格や認証の仕事をしていると、おのずと各メーカーのその道の“プロ”と話をする機会に恵まれる。そのプロとは、規格に基づき製品を設計している設計者であったり、認証取得手続きをする人であったり、部品・部材メーカーから機械メーカーに至るまで、職種を問わずプロがいる。
セミナーなどにおいて講師を質問でやりこめている人たちなども往々にしてそうである。ある1人の“プロ”が、国際規格が策定されていく流れや、規格作りをめぐってどれだけ貢献してきたかということを説明しながら、盛んに「安全」という言葉を連発していた。
「安全」って何ですか?と尋ねてみたら、「国際安全規格にのっとって設計された製品」といった答えが返ってきた。製品を規格に適合させることが安全性の立証行為のひとつであることは論を待たないが、それがすべてではない。
国際的な安全規格は、いわば分野共通のボトムラインというべきものであり、個々の製品が「安全」であるためには、製品固有の潜在的危険源(ハザード)に対処するためリスクアセスメントをしなければ、本質的に安全であるか否かわからないと考えるのだが、その会社ではリスクアセスメントをしたことがないとのことだった。
やはり「安全」に対する基本的な理解が欠落していると言わざるを得ない。
製造者は、公的安全規格への適合とは別に個々の製品に潜在するハザードが、人にも環境にも不利益な状態をもたらすことがないようにしなければならない。さらに設計者はまずハザード及びそれと関連したリスクを認識して、ハザードを取り除くことが出来なければならない。
ISO12100(機械の安全性)では、「安全」とは受け入れ不可能なリスクがないことであり、言い換えれば、受け入れ可能なリスクであれば「安全」であるとして認めることができると定義付けている。
では具体的にハザートとはなにか。それは客観的に存在するエネルギー的あるいは物理的危害の源であり、これらが許容範囲を超えると、健康障害または傷害を引き起こす原因となるものである。
例えば機械的、電気的、熱的、振動、放射、火災、生物学的または微生物学的、爆発性、有害物質、人間工学的、精神的過負荷、ヒューマンエラー、排ガス、落下、取り付け誤りなどが主に考えられるハザードであり、想定されるハザードの一覧はISO14121:1999付属書Aで参照できる。
製品の生みの親であるメーカーは、自社製品の潜在的危険を客観的に認識できない場合があるので、「気づき」を得る上でもこれを参照することは有効である。またハザード分析法としての手法「ホワット・イフ法」は、あらゆる種類の技術システムの設計、運転、使用について適用可能であり、具体的なQ&A方式でチェックリスト化しやすい方法といえよう。
来年以降、製品安全を規制する欧州低電圧指令の改定が予定されており、DC12/24V系の製品やバッテリーで駆動するような製品に対しても、リスクアセスメントをすることが必須要求事項としてあがっている。
ということは、そういった製品においてもハザードを特定し、リスクアセスメントすることが必要であり、機械のみならず低電圧機器についても、現在のところISO14121:1999が参照規格として最も相応しいといわれている。
製品分野に限らず、また公的基準の有無に限らず、基本はハザードの特定であり、リスクアセスメントを遂行するにあたって一番重要であるといっても過言ではない。
単独あるいは組み合わされたハザードの潜在的な存在が、人や財産や環境にどれだけシビアなダメージを与えるであろうか、その重大さを認識することから始まり、ハザードを除去することを何よりも優先させなければならない。
(04年9月29日掲載記事)
