掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。

グローバル時代の生き残り戦略

8) リスクの評価・低減…わが社の機械は安全か
  【リスクアセスメント実践編:ステップ5】

安全確保は企業の責任である。製造、運搬、組み立て、設置にかかわるような機械の不安全が原因で労働災害が起これば、その機械の製造者責任が問われるか、あるいは機械を導入した事業主は雇用する労働者に対して、労働安全衛生法を基本とする安全配慮義務が問われることになる。

作る側も使う側も常にリスクと向かい合うというシェアードリスクの構図である。昔に比べ労働災害はかなり減少しているとはいえ、現在もなお休業4日以上の労働災害は年間5万件にも達しており、日本のプレス機の災害件数は英国のそれと比較して1桁以上多い。

製造者としての責務は、多面的にリスクの査定(アセスメント)を実施し、潜在的な危険源を洗い出したら、次にその危険源が及ぼすリスクの程度を評価し、限りなくリスク低減する、つまり危険源を除去するか、完全除去できない場合、その危害の発生確率を減らせばよい、ということである。

ISO12100‐1によると、まず設計者が講じなければならない最初の安全方策ステップ1では、本質安全設計によるリスクの低減である。機械はユニットの集まりであり、ユニットは部品の集まりであることを考えると、ポンプ、モーター、ブレーカーなど、その構成部品ひとつひとつの安全規格要求を満たした上で全体の設計をする必要がある。

部品単位の本質安全設計がきちんとなされていれば、次のステップ2の安全防護(Safeguarding)や付加保護方策(Complementary protective measures)をする必要性を軽減することもできる。

次に機器としての機能上、構成部品単位の安全設計により合理的にリスクを回避できない、あるいは不十分である場合は安全防護方策をとる。安全防護方策には大分して2通りあり、可動部や通電部に起因する危険を隔離するもの、すなわちインターロック付きガードや制御式ガード等の設置や、危険を検知した場合可動部や通電を止めるイネーブルスイッチやセンサーなどの安全装置によるリスク低減である。非常停止装置等を用いて動力を遮断、エネルギーを排除する付加保護方策もここで行われる。

最後にステップ1、2で除去しきれなかった残留リスク対策として、ステップ3、使用者へ残留リスクの情報を伝えるという策がある。製造者には残留リスク情報を使用者に提供する義務があり、警告ラベルの機器への貼付や付属の工事仕様書、取扱説明書などに記載しなければならない。

IEC60417やISO7000等装置に用いる記号規格を参照して、使用者が理解できる表示であることが前提であることは言うまでもない。

ISO12100‐1の前身であるEN292‐1では設計者が講じる本質安全設計、安全防護、使用説明情報、追加予防策の4アイテムと使用者が講じる危害防護の着用や教育訓練、安全作業要領の徹底といった安全策とが融合した形で実施される位置づけであったが、ISO12100‐1及び本年11月に発行されたJSIB9700では、上述のスリーステップメソッドの反復的リスク低減プロセスと、ユーザーにより講じられる安全方策情報の設計者へのインプットというプロセスでより体系化された。

既に国際規格として確立している基本的な方法に沿ってリスクの低減を行うことを推奨するが、リスクマネージメントの厳しい企業においては独自の安全原則を持っているところも少なくない。某社は使用者により講じられる保護方策を安全4原則と謳い、オペレータに対しまず危険から「隔離」、エネルギーを「遮断」、それを信頼性工学のもとに「維持」し、「意思に基づいた復帰」をすることを要求している。

これは使用者の立場にたった安全配慮であり、製造者、使用者双方の立場を最大限考慮してリスクを限りなくゼロにできるよう努力している。この機会に管理者は、わが社の機械は果たして使用者にとって安全かという単純素朴な疑問に明確に答えられるか今一度自問してみて欲しい。

(04年11月24日掲載記事)